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「高麗のほうへ」展;井戸ぐい呑み3 柳下季器

¥22,000 税込

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《解説》※柳下季器「井戸ぐい呑み2」解説の続き
 もっとも、井戸のなかの小分類はその定義がいうほどわかりやすくはない。小井戸のなかにも大井戸と変わらない大きさのものがあったり、青っぽくない青井戸があったり、井戸脇と小井戸の違いがさほど明確でなかったり、小貫入といいながら井戸の多くには細かい貫入があったりして、初見でそれを分類しろといわれたら、戸惑ってしまうケースはたくさんある。小分類の定義は、だから、厳密とはいえない。それは、この分類が誰かひとりの茶人やひとつの機関によって決定されたのではなく、長い年月を通じて多くの茶人たちの実践の積み重ねを経て生まれたものだからにちがいない。呼称は共通しているが、実はその基準には複数の視点が交差しているというわけだ。

 柳下さんに今回の出品を依頼したら、「自分は井戸になると思いますが、それでいいですか。」との返答だった。もちろんいいに決まっているが、そこには、作家の作陶に向かう姿勢と、高麗茶碗についての理解が顕著に表れている。まず、柳下さんにとっての高麗茶碗とは、とりもなおさず井戸であるということだ。それは、井戸が高麗茶碗のなかで最も高い「名文」をもっていることと無関係ではない。桃山茶陶の様々な茶碗と対峙するこの方のスタイルは、つねにそれぞれの形式のなかでも最高とされるものに立ち向かう。長次郎しかり、光悦しかり、美濃陶しかり。そうしてはじめて作家の創作意欲は刺激され、それをとおしてその腕も磨かれていく。目標は高ければ高いほどいいということでもあろう。そして、いったん照準を定めたら、それを徹底的に突き詰める。それが柳下さんの作家としての姿勢にほかならない。

 この方の腕前であれば、井戸以外の高麗茶碗に取り組んでも、相応の作品はできるはず。そこに敢えて踏み切らないのは、井戸という形式が作家のなかでまだ汲み尽くされていないからだ。「伝世する井戸のなかには雨漏りのしているものがありますが、今回の作品は使い込めば雨漏りが出るようにちょっと仕掛けがしてあります。見かけはこれまでの作品と変わりませんが」。いくら井戸に挑んでも、まだまだ新しい作品づくりはできる。それほど、その世界は深くて広い。雨漏りの件ひとつとってもそうだし、三つの井戸のそれぞれに違う表情が、柳下井戸の底知れない可能性を物語っている。この方の場合、井戸と向き合うことがすなわち高麗茶碗に向き合うことに等しいということである。

《参考》ぐい呑み考「王の器~高麗茶碗のフォルマリズム」
    https://ameblo.jp/guinomikou/entry-12864313491.html

《作品情報》径8.1㎝×高さ4.4㎝、共箱付、新品
《販売期限》2024年12月25日
《お届け》共箱の御用意にお時間を要しますので、発送まで一定の期間を頂戴いたします。御注文時に作家に確認のうえお届け予定日をお知らせいたします。

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