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《解説》※柳下季器「井戸ぐい呑み1」解説の続き
名前をつけること、分類名を設けることは、まさに朱熹のいう「名分」化にほかならない。「名分」とは、社会のなかでの立場や役割を明確化するとともに、上下の秩序を確立することでもあった。朱子学をイデオロギーとした徳川体制下で制度化された茶道にあっては、茶碗をはじめとする茶道具の「名分」化が盛んに行われた。「銘」をつけるというのはその際たる行為である。高麗茶碗の場合、その形態が多様なだけに、その恰好の対象となった。初期の分類名の「三島」や「井戸」に加えて、一括して「カウライ」と呼ばれていたその他の茶碗のなかから「斗々屋」や「蕎麦」、「呉器」などのおびただしい分類名が生まれる。17世紀の後半になると、前世紀の初めとちがって「カウライ」よりもむしろこの分類名たちのほうが多く茶会記に登場するようになる。
「名分」化に上下の秩序を確立するという意味があるとすれば、井戸は高麗茶碗のなかで最も格が高い。本文でも述べたが、秀吉が黄金の茶室に合わせてつくらせた茶碗は井戸だったし、高麗茶碗のなかで唯一国宝となっているのも井戸、申翰均氏が高麗茶碗が祭器由来であることを主張する主な根拠としたのもまた井戸である。その位置づけは、次に続くナンバー2や3があって1番なのではなく、群を抜いて1番であるといってもいい。
しかも、安定期の茶人たちは、その「名分」化を分類としての井戸茶碗にも適用した。井戸という分類の下に、さらに「大井戸」、「小井戸」、「青井戸」、「井戸脇」、「小貫入」という下位分類名を設けたのである。「大井戸」はいうまでもなく、所謂井戸の条件を備えた代表格としての井戸。「小井戸」は「大井戸」に比べて小ぶりで梅華皮などが派手でない代わりに独自の表情をもつ。「青井戸」も「小井戸」同様小ぶりだが碗が鉢形にやや開きかつ釉調が青みがかっている。「井戸脇」は井戸というほどではないがそれに近い趣をもっている。「小貫入」は細かな貫入に特徴がある。この定義づけこそ、「名分」化の最たるもので、「大井戸」を頂点として、「小井戸」と「青井戸」がそれに続き、「井戸脇」、「小貫入」の順に井戸のヒエラルキーを構成する。同じ高麗茶碗のなかでも井戸はナンバー1であり、同じ井戸のなかでも大井戸は頂点にある。「名分」化は「大井戸」の地位をさらに高めることに貢献した。(柳下季器「井戸ぐい呑み3」の解説に続く)
《参考》ぐい呑み考「王の器~高麗茶碗のフォルマリズム」
https://ameblo.jp/guinomikou/entry-12864313491.html
《作品情報》径8.9㎝×高さ4.2㎝、共箱付、新品
《販売期限》2024年12月25日
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