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《解説》※西岡悠「御所丸黒織部」解説からの続き
織部の天才は、造形力にあるというよりも、むしろ壊すことにある。かれは、珠光が創始した「越境」スタイルを、利休を通じて最も忠実に継承した。既存の価値観を否定し、それによって新しい価値観を創造するというやり方がそれである。珠光や利休は、それを茶の湯のルールに対して実践したが、織部の場合、それだけにとどまらず、茶道具を壊すところまで過激化した。井戸茶碗を十文字にかち割って改めて継いでみたり、墨蹟を破いてみたり、窯の炎で破損した水指や花入を敢えて使用してみたり。われわれに最も親しいのが、織部焼のあの歪んだ茶碗である。
この歪みこそが御所丸に通じるというのが、御所丸織部御本説の根拠となっているが、高麗茶碗の歪みと沓茶碗のそれは、本文でも書いたように、その背景をまったく異にしている。たとえば、割高台のあの形式は、古代中国の祭器のひとつである「爵」に由来している。胴部が横長に歪んでいるのは爵の細長い器を、高台が割れているのもその三本の足をそれぞれ再現するためである。青銅器の精巧な表現を朝鮮半島の民窯の技術でなぞろうとした精一杯の努力の痕跡がそこにはある。本文ではそれを祈りの造形といった。
いっぽう、織部による沓茶碗の歪みは、「越境」由来だから、元来否定的な意思によって実現されている。簡単にいえば、円形を歪めて、シンメトリーを良しとする美学を否定するのが、そのコンセプトである。それは、茶碗を割ったり、墨蹟を破いたりする破壊的な表現と同質である。織部のこの芸術表現と高麗茶碗の造形が目指すところが交差する地点といえば、単に歪んでいるというその一点にすぎない。だが、歪んでいるといっても、いっぽうは既存の考え方を否定するために壊す力を表現し、もういっぽうは確たる信仰を再現するための表現である。おなじ歪みでも、それらがもつ意味は相容れない。これも本文で述べたが、織部の沓茶碗はまさに歪んでいると形容していいが、高麗茶碗のほうは何者かを再現しようとしている点で、歪みといってはならない。そこには、否定的な意思などなく、厚い信仰に基づいた積極的な造形のみがある。(西岡悠「御所丸黒狐手織部」解説に続く)
《参考》ぐい呑み考「王の器~高麗茶碗のフォルマリズム」
https://ameblo.jp/guinomikou/entry-12864313491.html
《作品情報》幅7.7㎝×奥行6.7㎝×高さ4.6㎝、共箱付、新品
《販売期限》2024年12月25日
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