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「高麗のほうへ」展;青瓷象嵌盃 豊増一雄

¥19,800 税込

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《解説》※豊増一雄「刻花文青瓷」解説からの続き
 「翡色」といわれた高麗青磁には、しかし、その後があって、最盛期を過ぎて高麗王朝の国力が弱体化するにつれて、その精度もまた次第に低下していく。14世紀になると、往時に比べるとかなり粗悪なものが出回るようになって、王朝の終焉とともに、それは、青磁を粗製化したやきものである粉青に変遷していく。この粉青こそまさに高麗茶碗で、日本の茶人たちがその侘びた風情を評価して茶席の人気を席巻した。

 だが、かれらの慧眼はその粉青になる手前の粗製青磁の侘びも見逃さなかった。「翡色」から遠くくすんだ灰色で、ときに焼成の不具合で黄色っぽくなった焼き損じにも、冷え枯れた魅力を見い出した。本文で言及した利休愛好の「引木鞘(ひきぎのさや)」などはその代表例で、その青は所謂青磁の一級品に比べるとずいぶんくすんでいるし、象嵌のキレもイマイチである。青磁の正統な基準でいえばB級品であるはずのこの茶碗に、利休たちは積極的な価値を付与した。狂言袴という分類でくくられるこの手の茶碗は、粉青に先立つ高麗茶碗の最も古い種類のひとつとして取り上げられる。先に高麗青磁は高麗茶碗のカテゴリーからはずれると述べたが、その意味で、それは、粉青になる前のその最終形において高麗茶碗に数えられていい。

 きれいな青磁を焼くひとはたくさんいるが、豊増さんのように、少しくすんだ、それこそ高麗茶碗に挙げられるような渋い青磁を焼くひとは稀である。焼きが下手なのは容易だが、敢えて下手に焼くのは難しい。それを狙ってできるところがこの方の真骨頂である。その力量を示す対照的な作品を今回送って頂いた。「刻花文」のほうは焼きもよく釉もよく溶けていて、しかも、この小さな器にこれほど精巧な彫り物を施せる技は見事というほかない。「象嵌」のほうは反対にくすんだ釉調とぼやけた象嵌で、高麗青磁末期あるいは粉青初期のあの微妙な陰影を表現している。前者を観ていれば、この方にかかれば「翡色」と呼ばれるほどの作品もさぞや可能だと思うし、「後者」からは青磁のフロンティアをさらに切り拓くパイオニアとしての作家像を読み取ることができる。

 写真ではわかりにくいが、いずれの作品も通常の盃のサイズからすると一回り小さい。ちびちび日本酒をやるのももちろんいいが、これに強い洋酒を注いで喉を焦がしながらあおるのもまた一興かと。そうなればおそらく、もういっぱい、を重ねて悪酔いすること必死だとはいえ。

《参考》ぐい呑み考「王の器~高麗茶碗のフォルマリズム」
    https://ameblo.jp/guinomikou/entry-12864313491.html

《作品情報》径5.5㎝×高さ5.0㎝(いずれも最大値)、新品、注意:共箱はつきません。
《販売期限》2024年12月25日
《お届け》共箱御不用の場合、1週間以内に発送いたします。共箱を御要望の方には、表示価格に実費2400円を別途御負担頂きます。御用意にお時間を要しますので、発送まで一定の期間を頂戴いたします。

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