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「高麗のほうへ」展;黄瀬戸柿の蒂盃1 鈴木都

¥18,700 税込

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《解説》
 「柿の蔕を選んだのは特に深い理由があったわけではありませんが、たまたま石ハゼが面白く出る土が手元にあって、それを黄瀬戸の油揚手と合わせたら、柿の蔕茶碗の薄がけ釉の枯れた味わいに共通するようなものになるのではと思ったからです。もちろん、以前から柿の蔕には一度挑戦してみたいとは思っていましたが」。都さんに今回高麗茶碗のなかでもとくに個性の強い柿の蔕を選んだ理由を尋ねると、こんなメールが返ってきた。今度の提案で、作家がどんな茶碗を選ぶか楽しみにしながら想像をめぐらせていたが、柿の蔕に黄瀬戸とは想定外だった。ときに南蛮との類似さえ指摘される柿の蔕に、黄瀬戸の派手目の化粧が似合うとはちょっと想像がつかなかった。だが、送られてきたふたつの作品はいずれもその特徴的な形態と釉景が不思議と調和している。

 柿の蔕が高麗茶碗のなかでも侘びの極北に位置することは、機会あるごとに主張してきた。土肌が剥き出しになっているかのような飾り気のないその表情は、侘しい草庵の茶室に、他のどの茶碗よりもふさわしくみえる。ときに苔むす巌にもたとえられるその景色が、実は土と釉薬の微妙な配合による人工的な演出であることを知れば、たとえば、みすぼらしい東屋にみえて当時最高級の建築技術で建てられた利休の待庵のそれとも重なってみえる。侘び茶の侘びは、本当の侘しさからではなく、お金と手間暇をかけてそうありたいという願望から生まれる。その意味で、柿の蔕は、待庵がそうであるように、その特殊な侘びと親和した。その風情とともに、その演出においても侘びの極北にあるのが柿の蔕茶碗である。

 だが、私見では、本文でも書いたように、柿の蔕もまた祭器である可能性が高いと思っている。理由のひとつは、その特徴的な形態にある。多くの碗形の茶碗は、この柿の蔕のように、わざわざ胴部を張り出すようなことはしない。実用性だけを考えれば、この張り出しは不要で、むしろ邪魔になるとさえいえる。井戸や三島などの碗形の茶碗には、このような造形はほとんど見当たらない。唯一例外が、似たような、しかし柿の蔕ほどでない張り出しをもつ蕎麦茶碗くらいである。その意味では、蕎麦もまた祭器であるかもしれないとも本文で述べたが、その不自然な器形と、申翰均氏が指摘した小さな高台という特徴からしても、両者は祭器由来である公算大とみている。(鈴木都「柿の蔕2」の解説に続く)

《参考》ぐい呑み考「王の器~高麗茶碗のフォルマリズム」
    https://ameblo.jp/guinomikou/entry-12864313491.html

《作品情報》径9.5㎝×高さ4.5㎝、共箱付、新品
《販売期限》2024年12月25日
《お届け》共箱の御用意にお時間を要しますので、発送まで一定の期間を頂戴いたします。御注文時に作家に確認のうえお届け予定日をお知らせいたします。

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